小説 生活保護腐敗列島 その3
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高橋は電話のメモについて山田にききなんとか処理が一応終わった。気がついたらもう午後5時だ。教育委員会総務課の時は4月異動に関する仕事で3月は異常に忙しく残業が100時間を超えたがそれ以外の時期は何か特別のことがない限り残業はなかった。普段は残業は月10時間くらいだ。
生活保護課は特に時期は関係ないらしい。今日は郵便受けに請求書などたくさんあり処理しなくてはならない。現場仕事だけでなく事務処理も結構あるのにはびっくりした。山田が一緒に残って教えてくれるということでありがたかった。一応事務処理は終わり時間は午後8時を回っていた。山田が大家と連絡をとってくれて明日死亡した生活保護受給者のアパートの撤去および荷物の処分などのことでアパートを訪問して大家と会うことになった。山田はさすが総務課にいただけあって事務処理は早いですねと言われた。今日はこれで帰ることにした。
大家との交渉
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翌日に高橋は山田と一緒に死亡した生活保護者のアパートを訪問した。大家もきていた。部屋の中はそれほどちらかってはいなかった。ただ意外とワイシャツとかものがいっぱいあるのには驚いた。生活保護課は生活に困窮しといるわけだから物がこんなにあるのは驚きだ。いやすごい。
さてこの荷物の処分とリフォームを何とかしてくれと大家が言ってきた。リフォーム代は生活保護費でだすことはできないし荷物のいわゆる家財処分費用は死亡の場合は支給することができない。さっそく大家がごねてきた。
大家は敷金1ヶ月分しかとっておらずその金額では間に合わないからなんとかしてくれと言ってきた。家賃は月額4万5千円で松井市での単身者の家賃の上限額になっている。部屋の間取りからすると少し高い気もする。共益費も3千円とっている。
家賃の滞納はない。山田が大家に保証人はいないんですかと聞いたら大家は身内からも見放されていて保証人などとりようはなかった。5年前に引越してきたが保証人がいないので高齢だし入居を認めたくなかったが役所に頼まれ仕方なく入居を認めたと大家は言い出した。死亡した坂田は70歳だ。入居した時は65歳だから高齢というほどではない。大家も70歳で入院していきなり死ぬとは思わなかったのだろう。
しかし家賃滞納はなく大家は生活保護の家賃上限まで設定しており損はしてないはずだ。しかし大家は市民であり市役所としては下手なことはいえない。山田は大家に家財処分の費用は検討するがリフォーム代は無理ですとやんわり伝える。大家は不満そうな顔しながらもそれじゃあ家財処分だけでも何とかお願いしますよと言って去っていった。山田はまいったなあと言って顔をしかめる。そりゃあそうだ。家財処分の費用は支給できないのだ。とりあえず役所に戻ることにした。
裏金で処分費用を作る
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山田は役所に戻ったあと高橋に裏技を使うしかないですねといった。高橋にはなんのことか分からない。山田は第2係のケースワーカーの角田のところへいった。角田は年齢は46歳で4年前に生活保護課に異動できた。30代前半のときにも生活保護者にいたことがあり出戻りだ。山田は角田に家財処分費用の相談をした。角田は独身で付き合いはよい。山田ともたまに酒を飲むみたいだ。
角田は山田の話をききそれじゃあ秘密資金を使うかと言い出した。秘密資金とは役所の金ではなくなくなつさた生活保護者の遺留金をためておいていざというときに出せる金としてプールしている金だ。高橋は驚きそんな金があるなんてばれたら懲戒処分ものだと思ったがこの現状をなんとかするにはきれいごとは言ってられない。山田はそんなにかからないので助けてほしいと角田にお願いした。
角田はプール金は今20万くらいしかないからその範囲でおさめられるんならいいよといってくれた。山田はおそらく数万円もいかないですと答えた。角田はいいよと答え特別だぞと笑っていた。山田はすぐに大家に連絡したら大家は満足し、あとは家財処分の見積もりを取ることだ。高橋はなんか危険な橋を渡っているみたいで怖かったが山田に従った。
アパートでの見積もり
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翌日に高橋は山田と一緒にアパートへいった。山田が選んだ家財処分業者鳥原産業もきていた。ここの会社は安くやってくれてどんなゴミ屋敷でも引き受けてくれるのでいつも使っているらしい。見積もりをしたら3万円とのことだった。これなら角田のプール金でうまくいく。山田は鳥原産業の社員に快諾してこれでうまくいきましたねと高橋に言った。高橋はこんなことして大丈夫なんだろうかと不安に思ったが自分の力ではどうにもならないので任せるしかない。
山田は大丈夫ですよといって高橋と一緒に役所に戻った。山田は角田に伝えた。角田はそれならオッケーだ。上にはいうなよと言った。そして山田にまた飲みに行こうと笑いながら言った。高橋くんだっけ君も一緒に行こうと言ったので頭を下げた。飲みにいくのはかまわないが今後もこんな危ない橋をわたるのかと思うと高橋は暗澹たる気持ちになっていった。